色々メモ

読んだ本のメモとか

『神々は繋がれてはいない』

#1699

ケン・リュウ短編傑作集6つめ。
後半に選ばれただけあって、挑戦的なテーマというか、変わった話も多かった。


特に記憶に残った、というか考えながら読んだのは『ビザンチン・エンパシー』。
二人の主人公が、それぞれの理想をもって難民問題に立ち向かう。

寄付金の運用にまつわる問題にブロックチェーン技術を使う、という現実でもありえそうなテーマ。
ただし、ストーリー展開同様に、現実世界でもこの方法は難しいだろうな。

 

社会性動物として性善説には賛成だけど、「善」という抽象的なものを人間が正しく評価できるとは思えない。
結局、「私はこんなに困っています」というアピールがうまい人が支援を受けられて、相対的に、より困っている人が無視される可能性がある。

だいぶ前にアイスバケツチャレンジがバズったときにも上がったテーマ。
「難病の○○ちゃんが海外で治療を受けるための募金」のように、目立ったもの勝ちというか。

もちろん、偏った支援だとしてもその支援先には確かに困っている人がいるので、活動自体に難癖付けるわけでは無いけど。
そこに集まった支援で、もっと多くの人を助けることもできたのではなかろうか。
現代のトロッコ問題。

 

 

『文学少女対数学少女』

#1698
数学にまつわる有名な話を、推理小説で再現する。

これだけだとわざとらしいストーリーになってしまうけど、作中作という形態をとることで多少不自然でも許せるようになっている。さらに、登場人物が数学とのつながりを説明するパートもつけることができてスッキリ。

特にフェルマーの最終定理に関する歴史を再現した『フェルマー最後の事件』はとても良かった。

唯一の欠点は、登場人物が中国名で全然覚えられないこと。これは慣れるしかない。

 

途中、無限の大小比較に関する話があり、つい最近読んだ『数えられるもの』と同じ解説が出てきた。しかも本書の解説でその小説が触れられている。すごい偶然。

 

他分野の逸話を水平利用するのは他にも使えそうな考え方。

 

文学少女対数学少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 

 

『数えられるもの』が収録されている短編集。

ynw-book.hatenablog.jp

 

『1兆ドルコーチ』

#1697

コーチングとはかくあるべき。

チームの人間関係を円滑化し、1on1で個人の背中を押す。

自分ではなく他者を成功させるために立ち回る。

質問をし、耳を傾け、発破をかける。でも、何をすべきかは押し付けずに部下の自主性にまかせる。

 

今の仕事だと、理由は知らされずにやることだけ押し付けられるケースが多いので、ちょっとはコミュニケーションをとりたいなぁ。向こうから言われないなら、こちらから質問すべきか。

 

ビジネスだと個人の感情よりロジックが優先されてしまいがちだけど、結局人間関係が一番大事。信頼がない人同士でギスギスした打ち合わせとか、お互いが自己利益の最大化だけ目指したりとか効率悪いことこの上ない。

 

最近うちの会社でもチームビルディングや1on1が取り入れられてきたのでタイミングが良い。形だけの取り組みで終わらせないようにこの本の内容を活用しよう。

 

『生まれ変わり』

#1696

ケン・リュウ短編傑作集5つめ。

こういう短編集の収録順番はどうやって決めているんだろう。

 

表題作の『生まれ変わり』は、自己というものについて考えさせられる。極端な話、夜寝て、起きたときに昨日と同じ自分であると自信をもって言えるかどうか。

それにしても、文中に出てくる「か゜」という文字が気になってしょうがなかった。(説明は末尾の解説に書いてある)

 

収録作の中では『化学調味料ゴーレム』が良かった。こういうトーンの話は好き。主人公のくだけた言葉選びが楽しめる。ちょっと違うけどアンディ・ウィアーの『アルテミス』みたいな。

関連で思い出したけど、昔読んだホラー風コメディ短編も似たような文体が記憶に残っている。タイトルが思い出せない・・・。

生まれ変わり (ケン・リュウ短篇傑作集5)

生まれ変わり (ケン・リュウ短篇傑作集5)

 

 

『ゲノム編集食品が変える食の未来』

#1695

恥ずかしいことに、遺伝子組み換えの仕組みについて少し誤解していた。

 

● ゲノム編集

目的箇所でDNAを切断。その後の経過は自然任せ。(本来ランダムに起こる突然変異の発生個所を指定できる)

● 遺伝子組み換え

他生物が持つ目的遺伝子を、対象のDNAに挿入する。普通の突然変異から逸脱した変化が起こせる。
ウィルス進化論とか見ると遺伝子組み換えも自然界で起きないとは言い切れないけど。

 

著者の主張は、ゲノム編集は自然に起きる突然変異と同じことなんだから、交配による品種改良と差別しないでほしい、というもの。

また、遺伝子組み換えであっても、そもそも必要性から生まれた技術であり、単体のリスク評価だけではなく遺伝子組み換えを行わなかった場合のリスクも考慮すべきというもの。例えば、遺伝子組み換え作物で栄養素補強した食材を食べることで、貧困国の病気を予防して生存率を上げられるケース。
個人的には納得。というかもともと遺伝子組み換え賛成派なのでこの本の考え方を補強に使おう。

 

ただし、通常の交配による品種改良とは比較にならないほど早く世界に広めることができるので、外部環境に対する影響については慎重に検討したほうが良さそうには思う。
例えば耐害虫の植物ばかりになったら、虫がいなくなって生態系に影響が出たりしないのかな。
今までと比べてペースが速すぎて、虫が他の植物を餌にするように適用できないなんとことに。


アンチサイエンス思考の原因となる以下に注意。
- ショートカット: 情報が多すぎて処理できないので、根拠もなく直観にたよる。
- 確証バイアス: 自分の考えを補強する材料ばかり探して、反証を調べない。
- 社会的な目的: 自分が所属する集団の常識から抜け出せない。

特に最新の科学技術は一般人に簡単に理解できるものではないのでショートカットのミスに陥りがち。
陰謀論みたいな簡単な説に飛びつかないように。

確証バイアスを防止する観点からは、次に読むべきなのは、アンチゲノム編集食品な内容の本。

 

ゲノム編集食品が変える食の未来

ゲノム編集食品が変える食の未来

 

 

『本好きの下剋上 第三部 III~V』

#1684 #1687 #1694

第三部まで完了。
ファンタジーなアイテムをファンタジーに集める。
ここまで世界観のわりに現実的な話だったので、三部で一気に変わった印象。

紙やインクの改良も、歴史に基づいてコツコツ進めるよりファンタジー要素で割り切るほうが展開が早いので割り切りが大切。

若者向けの話だとどうしても大人の威厳がないがしろにされることがあるけど、この話はおじさんキャラが年を重ねた分ちゃんと頼りになるので良い。

ラストの展開が目次で思いっきりネタバレされているのはしょうがない。

 

 

 

ynw-book.hatenablog.jp

 

『わが母なるロージー』

#1693

悲しみのイレーヌに始まる3部作と関係する小作品。
時間制限があるため文字通り分刻みで話が進む。

事件の目撃者に関するちょっとしたネタが割と好き。これだけで何か考えられそう。

終わり方が少し寂しいのはシリーズ共通。
読み間違いでなければ、このタイミングで話が進まなかったら爆弾の数が足りない?
そこは不発だったと言えば交渉は続けられるのかな。

 

わが母なるロージー (文春文庫)
 

 

 

ynw-book.hatenablog.jp